【写真つき特報!】[転送・転載歓迎]

●山田洋行とパトリオットの露出が突出!

溶解する軍民の境界と「危機」に巣食うビジネス群
…「危機管理産業展2007」レポート
(10月17日〜19日、東京ビッグサイト)




◇有明にパトリオットが異例の登場!



↑左はミサイル発射装置、レーダー装置、電源車、射撃管制装置、アンテナ・マスト装置といったパトリオット2(PAC2)の各ユニット。
右は武山基地(横須賀市)のPAC2部隊の車両。車体前面左側に「武分基」の文字が書かれている。


 11月中旬にもパトリオット3(PAC3)ミサイル(埼玉県入間基地)の都心への移動展開演習が計画されている中、10月17日、予行演習とも言うべきタイミングでパトリオットが有明に登場した。やってきたのは入間基地に司令部を置く第1高射群のうち、第2高射隊である武山基地(横須賀市)のPAC2部隊。車両に記された「武分基」の文字で判明した。基地祭等での公開展示はあるものの、今回のような展示は極めて異例という。


↑PAC2の発射装置(LS;Launching Station)



↑PAC2のレーダー装置(RS;Rader Set)

 屋外展示場にロープなどが張られた中、ミサイル発射装置、レーダー装置、電源車、射撃管制装置、アンテナ・マスト装置の5つの機材がずらりと並べられていた。各々の前に説明看板が設置され、その脇に軍服姿の自衛隊員が説明も兼ねて立っていた。ビラまきや横断幕禁止の看板も。


↑PAC2の電源車(EPP;Electric Power Plant)

 弾道ミサイル迎撃用のPAC3は、PAC2の発射装置やレーダー装置、射撃管制装置を一部改修(三菱重工が担当)して運用可能となる。PAC2の場合、1台の発射機に装てんできるのは4発だが、PAC3の場合はミサイル本体が細いため、16発が可能となる。実際の運用では同じ部隊でPAC2とPAC3を混用するという。


↑PAC2の射撃管制装置(ECS;Engagement Control Station)

 参加者の一人がPAC2を見て「何で消防車じゃなくミサイルなんだ」とつぶやいていた。こうした軍備が「危機管理」に名を借りて平然と一般展示され、「訓練」名目で公園の軍事占拠さえもが行われようとしている。


↑PAC2のアンテナ・マスト装置(AMG;Antenna Mast Group)


◇軍産癒着商社「山田洋行」の戦場ロボット展示

 お掃除ロボット「ルンバ」を世界で販売している米国のiRobot(アイロボット)社が製造している戦場ロボット「パックボット」(PackBot)。守屋武昌・前防衛事務次官との軍産癒着で焦点となっている軍需専門商社「山田洋行」が展示していたのは、軍用ロボットだった。

 PRパンフのタイトルは「世界最先端・戦術ロボット」。「米軍Future Combat System(未来戦闘システム)として正式採用決定!」「人命に関わる危険任務を完全遂行」「イラク・アフガニスタンでの偵察・基地監視」「米陸軍採用/世界中で1000台以上活躍中」などの宣伝文句が続く。

 米ボストン近郊にあるiRobot社は1990年、マサチューセッツ工科大学(MIT)出身者らが起業。最初の研究依頼は、国防総省の弾道ミサイル防衛局による初のロボット開発プロジェクトだったという。

↑防衛省の守屋武昌前事務次官の昇進と歩みを共にした
とも言われる山田洋行の展示ブース。



 パックボットも国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)との契約により開発された。並行して開発が進められたルンバと共通するナビゲーション技術が使われているという。イラクの米軍から本社に届けられた戦場で遺体を運ぶのに使う「ボディーバッグ」には、「殉職」したパックボットの部品が詰め込まれていたとの逸話もある。

 10月22日の読売夕刊に掲載された「大学がつくるハイテク兵士」という興味深いレポートには、MITがナノテクノロジーやロボット技術の軍事転用に深く関わり、国防総省から巨額の研究費(1研究所で年間730億円超)を得ていることが紹介されている。まさしく「軍産学複合体」の典型である。記事の掲載写真の中にパックボットがしっかりと写っていた。
↑iRobot(アイロボット)社製造の戦場ロボット「パックボット」
(PackBot)。

 山田洋行展示ブースの説明担当者は、癒着問題について「あれは航空機部門の話で、業界紙には以前から出ていたこと」とうそぶき、陸上自衛隊へのパックボットの営業については、「現場の評価は高いが、陸自は伝統的に国産志向が強くなかなか難しい」とコメント。「価格は1500万円から2000万円でそれほど高くない」「ロボットの腕の部分にモーターが入っていて動きがしなやか」とPRしていた。ちなみに現在、防衛省技術研究本部が開発中の「携帯型移動ロボット」の重量は34kg。山田洋行社員の説明によるとパックボットは最少14kgとのことでかなり開きがある。

 「未来兵器」への着目は、さすがにいわくつきの軍需専門商社。軍事色の濃さの点で突出した展示だった。

↑「パックボット」の制御装置。

◇日本の偵察衛星超える50cmの分解能 撮影写真も入手可能に

 「日本スペースイメージング」は三菱商事が設立した米商用衛星IKONOS(イコノス)衛星画像の極東地域での撮影権と販売権を持つ会社。現在の解像度は最高82cm(標準1m)だが、2008年春に打ち上げ予定(米バンデンバーグ空軍基地から)の次世代超高分解能衛星は直下で41cm、標準製品は50cmという地上分解能を実現するという。50cm分解能では駐車した車の向きが判別できるとのこと。展示ブースの営業担当者は「詳しくは話せないが現在、防衛省にも写真を購入してもらっている。作戦立案などにも使われる。民間企業として国を支援している」とかなり率直にコメント。

↑分解能50cmと言われる「日本スペースイメージング」の
GeoEye-1

 日本の偵察衛星の分解能は公称「1m」。ただし、「軍事機密」を盾に画像は一切公表されていない。宇宙の軍事利用に道を開く「宇宙基本法」の成立後には、偵察衛星の解像度を高めることが計画されている。

◇自衛隊の「一等地」でのPR

 順序が逆になったが、自衛隊は屋内展示でも露骨だった。入口からすぐに並ぶ展示ブースの一角を占め、軍服を着た隊員が参加者に軍服着用体験を盛んに勧めていた。テレビ画面ではミサイル防衛(MD)のPRビデオが繰り返し垂れ流されており、MD導入決定時の映像には、新国防族のドンである石破茂の顔が写っていた。
↑軍服着用体験を勧める自衛隊員。後ろに見えるは石破茂の顔。

◇レスキューロボ競演とロシア非常事態省の出展

 会場で目についたのは、災害救援用のレスキューロボットの実物展示だった。いくつもの企業がロボットを実際に操作してみせていたが、最も小型だったのが三菱電機特機システムのものだった。日本の優れたロボット技術は米国の国防総省や軍需企業も注目している。ちなみに三菱電機は偵察衛星やMD用最新鋭レーダー「FPS−5」などの製造企業であり、防衛省との2006年度の契約額は第3位。防衛省の天下りランキング(『週刊ダイヤモンド』07年6月23日号)でも第5位(98人)に食い込んでいる。
↑三菱電機特機システムの災害救援用のレスキューロボット


 海外からの出展が少ない中で目立ったのは、ロシア連邦市民防衛・非常事態及び災害対策省(写真は担当者が既に退出)。不気味な雰囲気を漂わせていた。
↑ロシアの市民防衛・非常事態及び災害対策省の展示ブース

◇米巨大軍需企業と組むコトヴェール

 最後に「コトヴェール」についてふれておきたい。東京・中央区勝どきのネットワーク関連機器ベンチャーであるコトヴェールは、米巨大軍需産業の一つでMDはじめ宇宙部門に強い「ノースロップ・グラマン」と販売提携している。MD分野に関連した複数のソフト、システムや個人認証、危機管理、遠隔制御などの技術を扱っているとされ、防衛省とも取引している。電磁波防止フィルタや指紋照合装置などでもノースロップ・グラマンと提携しており、それらは今回の展示の中心となっていた。

↑米巨大軍需産業「ノースロップ・グラマン」と販売提携しているネットワーク関連機器
ベンチャー・コトヴェールの展示ブース

 今回、同時に非公開開催された初の「テロ対策特殊装備展」も併せて、従来考えられなかった水準の展示イベントが開催される時代に突入した。軍民の境界もますます曖昧なものになっている。監視と異議申し立てが今後一層必要になることは間違いない。

【報告】核とミサイル防衛にNO!キャンペーン
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2007年11月3日(土)更新


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