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「核とミサイル防衛にNO!キャンペーン」も参加している「グループ 武器をつくるな!売るな!」による安倍晋三首相と久間章生防衛大臣あての抗議声明です。安倍首相と久間大臣に送付されたものです。

追記:安倍晋三は遂に集団的自衛権の行使に踏み出すための「有識者会議」設置を表明しました。メンバーは北岡伸一や岡崎久彦らバリバリの行使解禁派。結論は見え見えです。行使解禁の突破口の一つが米国向けミサイルの自衛隊による迎撃です。秋にも「結論」を出すとされるこの会議への監視・解散の働きかけも必要になります。

【抗議声明】

●航空自衛隊入間基地へのPAC3配備に抗議する

 3月30日、航空自衛隊入間基地に、地元埼玉をはじめとする多くの市民が反対の声をあげているにも関わらずPAC3配備が強行された。3月27日の衆議院安全保障委員会で、久間防衛大臣は「昨年八月以降、狭山、入間、所沢市と埼玉県に(配備を)説明し、基本的に地元の理解を得られていると感じている」と語った。とんでもない。強力なレーダー波の人体への影響や移動展開時の道路封鎖などの交通制限、迎撃による落下物被害の問題など、地元住民の強い懸念に対する責任ある回答は今に至っても一切なされていない。

 ミサイル防衛(MD)の推進は、横田への日米共同作戦司令部の設置など米軍・自衛隊再編の要の一つとされているが、沖縄など各地の再編関連自治体および住民に対しても同様の態度で臨むつもりなのか。防衛大臣の主観的な「感じ」を根拠に「理解を得られている」と判断し、地元住民の反対の声を無視してPAC3配備を強行したことは、民主主義に反するものと言わざるを得ない。
 しかも今回の配備は、北朝鮮の核開発問題の解決に向けてアメリカが金融制裁解除に歩み寄った直後に行われた。日本政府はPAC3配備の理由として「北朝鮮の弾道ミサイルの脅威」を挙げているが、米朝の外交交渉により北朝鮮の「脅威」なるものは除去できるのである。

 アメリカはイラク戦争などで先制攻撃に踏み切ってきた。PAC3をはじめMDは、それに対する反撃を封じ込めるものであり、先制攻撃を受ける恐怖を今まで以上に北朝鮮に抱かせ、軍拡に駆り立て、外交による平和的解決の可能性を損なうものだ。また、日米によるミサイル防衛の潜在的対象は中国だとも言われており、米中、日中の緊張激化の火種になりかねない。MD配備は、既に多弾頭化などのミサイル軍拡競争を招いており、中国による衛星破壊実験といった事態も生じている。

 しかも、アメリカが日本周辺でのMD態勢を強化する理由は、グアム、ハワイ、米本土に向かう弾道ミサイルを日本周辺上空で撃ち落すためだ。アメリカに向かう弾道ミサイルを自衛隊のミサイルで迎撃することは、憲法で禁じられているとされる集団的自衛権の行使に踏み込むものだ。それを突破口に、集団的自衛権の行使が、海外での「対テロ戦争」にも広げられる恐れがある。
 次世代海上発射型迎撃ミサイルの日米共同開発などは、日本の先端民需技術をアメリカが吸収するためのものだともいわれる。一方、アメリカの先端軍需技術などが漏洩しないように「軍事秘密一般保全協定」(GSOMIA)の締結が求められている。その先にあるのは、「スパイ防止法」の制定だ。

 このようにミサイル防衛は数々の問題を有しているが、そもそも実際に弾道ミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落すことができるのか、専門家からも疑問視されている代物だ。「成功」とされる実験も「やらせ」に等しいと言われている。得をするのは、一発だけで数億円とされるPAC3ミサイルを製造するロッキード・マーチンや、2008年度配備分からのPAC3のライセンス生産を行っている三菱重工など、軍需産業だけだ。
 軍需産業に支払われる購入費は国家予算、即ち納税者の税負担で賄われる。入間などへの前倒し配備のための購入費だけでも76億円という補正予算が組まれた。次世代海上発射型迎撃ミサイルの日米共同開発費などを含め2007年度のMD関連予算は過去最高の1826億円に達した。完全な迎撃など不可能であるにも関わらず、未完成品を配備し、更新し続けるMD開発は無限のプロジェクトであり、納税者の負担は天井知らずだ。

 軍需産業からすれば、MDは「打ち出の小槌」ということだ。だから、日本の財界にも、軍事技術の日米共同開発の推進によって先端技術開発力を高めようという動きが浮上している。宇宙の軍事利用を可能にするための宇宙基本法制定の動きや、武器輸出規制の緩和を求める声も強まっている。こうした動きは、日本にもアメリカのような「軍産複合体」を生み出す道に通じている。軍産複合体は「脅威」を捏造し、先制攻撃を仕掛け、戦争で肥え太るものであることは、イラク戦争が物語っている。その一方で死傷するのは、兵士であり、何よりも民衆であることも、イラク戦争が実証している。

 私たちは、以上の理由により、PAC3の入間基地への強行配備に強く抗議する。そして、日本政府・防衛省に対して、ミサイル防衛の推進をやめ、PAC3を入間からただちに撤去することを求めるものである。

2007年4月2日   グループ 武器をつくるな!売るな!
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                東京都千代田区三崎町3-1-18 近江ビル4階
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2007年4月12日(木)更新