【抗議声明】
「文民統制」破壊の先制攻撃支援法=
MD法(改悪自衛隊法・防衛庁設置法)
の成立に強く抗議する!


 「何かをする時にシビリアンコントロール(文民統制)と言われるのは日本ぐらいだ。(現場判断の)手続きを決める上で、シビリアンコントロールが確保されないという議論になること自体が信じられない」。昨年11月30日、古庄幸一海上幕僚長(当時)は「文民統制」の原則を公然と敵視する暴言を放った。

 本日7月22日、「ミサイル防衛(MD)法案」(自衛隊法改悪案を含む防衛庁設置法等に関する改悪案)が参議院本会議で与党の賛成多数で可決成立した。これにより、制服組である古庄の違憲発言は立法府により追認され、正当化・合法化された。

 自衛隊の武力行使を制限してきた、憲法九条理念に基づく「文民統制」原則がいとも簡単に突破された歴史的瞬間である。昨年12月、武器輸出禁止三原則に穴が開いたのに続いて、原則の破壊の口実となったのは今回もまたMDであった。

 この法改悪の本質は、まず何よりもMDという名の先制攻撃支援システムの法的整備にある。在日、在グアム、第7艦隊などの米軍はトマホークをはじめとする先制攻撃兵器を保有し、中国や北朝鮮を標的にその多くを発射態勢に置いている。日本もまた、JDAM(GPS精密誘導爆弾)を皮切りに先制攻撃兵器の導入に舵を切った。MDは相手国の兵器を無力化することで、核をも含めた先制第一撃能力を万能にする役割を担う攻撃的な兵器システムである。

 さらに、今回の法改悪によってミサイル発射=武力行使の権限は自衛隊指揮官=軍人に丸投げされる。政府与党は国会の事後承認さえ頑なに拒否し、自衛隊に武力行使のフリーハンドを与えた。遂に軍部が事実上の開戦権限を掌握したことになる。併せて合法化された三軍統合運用は、実戦に向けた部隊運用の効率化を狙っている。

●「戦争保障委員会」の暴走
 私たちが法案の中身以上に戦慄を覚えたのは、チェック機能をほぼ完全に喪失した国会の悲惨な姿だった。衆議院安全保障委員会はMD反対派の社共両党の委員自体が不在、参議院の外交防衛委員会も各一人ずつに過ぎず、参考人すら呼べない。招かれた参考人は衆参合わせた5人ともMD推進派で占められ、迎撃のみならず敵基地攻撃も行なえという好戦論が吹き荒れた。MD反対の民意は審議以前に抹殺されていた。

 審議においても、「100発中99発迎撃できる」とテレビで無根拠に偽証した大野功統防衛庁長官がデタラメ答弁を連発した。彼は「MDは先制攻撃への反撃としてのミサイルを迎撃するものであり、純粋防衛とは言えないのではないか?」との本質的問いに対し「大変絡み合った複雑な問題」として答弁を避けた。また、防衛庁官僚はMD兵器の整備を巡る多くの具体的問いに「今後検討する」を繰り返した。

 加えて見過ごせないのは、前原誠司ら民主党安保・外交部会執行部が、法案反対の立場を取りつつ与党と水面下で話をつけ、三軍統合運用の促進やMD以外の軍拡にさえ道筋をつけようとする詳細な附帯決議を画策、実現させたことである。こうした惨状は、軍事の暴走を止めるには悪法製造マシーンと化した国会を改めることが不可欠だということを私たちに思い知らせた。

●MD不参加のカナダに続け!
 政府は、来年3月予定の次世代MDシステム日米共同迎撃実験の成否確認すらせぬまま、8月の概算要求に共同開発費を計上しようとしている。また大野防衛庁長官は武器輸出の更なる拡大につながる次世代MDシステムの第三国への輸出容認の発言を行なった。PAC3ミサイル(入間、府中、岐阜、福岡)や最新レーダー(青森、佐渡、鹿児島、沖縄)の配備先の明確化、横田基地への日米統合共同作戦センターの設置、三菱重工によるPAC3のライセンス生産決定、米MD対応イージス艦の新規配備と作戦訓練の開始など、MD網構築は新たな段階に入りつつある。

 私たちは、文民統制破壊の先制攻撃支援法であるMD法の成立に強く抗議する。東北アジアの平和を阻害し緊張を高めるMD法の一刻も早い廃止とMD導入自体の撤回を要求する。今年2月、カナダ政府は、MDが宇宙兵器の配備さえにらんだ軍拡装置だと見抜いた世論を受けて、米MD構想への不参加を決断した。非武装、非軍事理念を明文化した憲法九条を持つ日本こそ、ただちにカナダに続くべきだ。そして、「ミサイル防衛」という名の巨費を投じるミサイル軍拡ではなく、最も費用対効果の高いミサイル軍縮の道こそを勇気を持って進むべきである。

2005年7月22日

核とミサイル防衛にNO!キャンペーン2005
               (大田区西蒲田6-5-15-7)
新しい反安保行動をつくる実行委員会[第9期]
               (千代田区三崎町3-1-18近江ビル4階)
    <連絡先> [TEL・FAX]03-5711-6478(キャンペーン2005)


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