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…以下の声明を29日夜、米大使館、首相官邸、額賀防衛庁長官、横須賀市、神奈川県、各政党あてにFAXしました。

【抗議声明】

●迎撃ミサイル搭載イージス巡洋艦「シャイロー」の横須賀への実戦配備は先制攻撃力の強化であり、強く抗議し、その撤回を要求します


 8月29日(火)午前10時前、ヨコスカ平和船団の抗議船が配備反対の声を挙げる中、米海軍横須賀基地にミサイル防衛(MD)用迎撃ミサイルSM3を搭載したイージスミサイル巡洋艦「シャイロー」(1992年就役、9950トン)が接岸、配備されました。既に横須賀には、2004年9月以降MD用最新レーダーを装備したイージス駆逐艦6隻が次々と配備され、北海道奥尻島沖に作戦区域を設定し、作戦訓練を行っていました。今回のシャイロー配備は、日本列島における、また世界における海上発射型迎撃ミサイルの初めての実戦配備であり歴史を画するものです。
 麻生太郎外相は28日、シャイロー配備について「日本の弾道ミサイル防衛を補完するものだ」と高く評価し、接岸後に岸壁で行われた記念式典で米海軍のウィンター長官は、「北朝鮮のミサイル発射で、我々がこの地域で進めた安全保障が正しかったことが示された」との珍見解を述べました。7月5日に北朝鮮が強行したミサイル発射実験(私たちは強く抗議するものですが)を最大限に利用してMD導入を正当化し、その配備を加速させている日米政府にとって、シャイロー配備はMDを新たな段階へと進化させるステップです。
 しかし、私たちは見え透いた嘘には騙されません。卑怯にもMDは「防衛」の装いの裏に、極めて攻撃的な姿を隠しています。そもそもイージス艦は、トマホーク巡航ミサイルをはじめとする攻撃ミサイルの垂直発射管(VLS)を多数装備しており、横須賀配備のイージス艦における現在の総数は実に900を超えるとされています。トマホークの約半数(200発を超える)は、横須賀に停泊中でもピンポイント爆撃可能な発射準備態勢に置かれていると言われます。しかもトマホークは、この間その能力が格段に強化されています。2004年から配備が始まった「タクティカル・トマホーク」は、発射後の攻撃目標の変更・再設定や戦場被害状況の映像監視などの新機能が付加され、燃料タンクの大型化などにより、飛翔距離を従来型の約1300〜1800キロから大幅に延伸させ、その射程は朝鮮半島全域のみならず中国やロシアにまで拡大しつつあると見られます。

 2003年に開始されたイラク侵攻では横須賀配備のイージス巡洋艦カウペンスがトマホークを発射して先制攻撃(=侵略)の戦端を開きました。史上最強の攻撃艦であるイージス艦がトマホークという「矛ミサイル」に加えてSM3という「盾ミサイル」を併せ持ち、日本海(東海)に前方展開する。それが周辺国に対して「先制攻撃万能艦」とも言うべき最大級の脅威として映ることは必至です。MDは先制攻撃に対する「報復」を封じ込めることにより、先制攻撃を行い易くする極めて危険な兵器システムなのです。他国の脅威を煽ることに専心するマスメディアや好戦的な政治家たちに決定的に欠けているのは、自らが加害性を増大させていることを自覚する想像力ではないでしょうか。
 年内には横須賀に配備されているイージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」と「ステザム」がSM3を搭載できるように改修され、来年2007年にはさらに2隻の迎撃艦が加わると言われています。例えば再度北朝鮮によるミサイル発射実験が行われた際、それをこれらイージス艦が迎撃するという事態が起こる可能性があります。それが「実験の戦争化」ともいうべきエスカレーションを引き起こさないという保証はあるのでしょうか。
 MDは、それを打ち破るという大義名分を掲げた軍拡を相手国に誘発する(北朝鮮ばかりか中国やロシアも)のみならず、武器依存を深めることで、根本的かつ現実的な解決の役割を担うべき外交交渉の余地を極端に狭め、軍事的な緊張状態を恒常化させるものです。
 また、強行されつつある原子力空母の配備も併せた横須賀基地の機能強化は、以前にも増して周辺住民に相手国からの第一級の標的となるというリスクを押し付けるものです。7月31日には、青森県つがる市の空自車力分屯基地に前倒し配備された米国土防衛用の移動式早期警戒レーダーである「Xバンドレーダー」の飛行制限区域の存在により、沖合に流された二人のヘリによる捜索が中断されるという事態さえ起きています。MDは日本列島を「米国の盾」化するものであり、「軍事的植民地」化を一層深化させるものなのです。

 私たちは、東北アジアの核・ミサイル「危機」の解決と、始動した軍拡スパイラルに終止符を打つために、米朝の直接対話により休戦状態を終わらせることに加えて、多国間の軍縮アプローチにより非核地帯化やミサイル軍縮を達成するという道こそを提案します。
 防衛庁は来年度予算案の概算要求でMD経費として今年度に比べて56.5%の大幅増の2190億円を決定しようとしています。この中には、驚くべきことに配備前倒しを促進するためとして、地上配備型迎撃ミサイル「パトリオットPAC3」をライセンス生産する三菱重工などの軍需産業への公的助成制度の新設費用までもが含まれています。社会保障や医療、福祉などを切り捨て、弱い者いじめとも言うべき政策を乱発する一方で、「死の商人」=軍産学複合体に過剰な保護を与える非道な政治は根本的に誤っています。
 横須賀市や神奈川県は住民に一番近い行政として、MDのトリックを見破り、加害と被害のリスクを地域に押し付ける配備の撤回を表明すべきです。MDを容認する民主党内の心ある議員は、MD反対をより強く表明し、党内論戦を挑むべきです。また共産、社民など各党議員に対し、より大きな声で「MDにNO!」を発信することを求めます。
 私たちは、MDシステム配備地域において反対の取り組みを強めることを基礎にしながら、MDやトマホークをはじめとする全ての兵器配備の撤回に向けた粘り強い働きかけを継続することを表明します。

2006年8月29日  核とミサイル防衛にNO!キャンペーン2006

           [連絡先]東京都大田区西蒲田6-5-15原田荘7号
(TEL・FAX)03-5711-6478 (E-mail)kojis@agate.plala.or.jp
http://www.geocities.jp/nomd_campaign/

◇シャイロー入港時の平和船団による抗議の様子は、
 「リムピース:追跡!在日米軍」ホームページの参照を。
http://www.rimpeace.or.jp/jrp/umi/yokosuka/060829shilohin.html

◇横須賀基地におけるイージス艦の配備状況、海上行動などについては、
 「ヨコスカ平和船団」ホームページの参照を。
http://homepage1.nifty.com/heiwasendan/


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