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※偵察衛星発射に対する抗議声明を9月11日(月)午後、JAXA、三菱電機、河村建夫衆院議員、首相官邸などにファックスにて送りました。

[以下は、打ち上げ前の声明に一部補足して送付したものに、さらに新しい情報を加筆した確定版です。抗議先に河井議員も追加しました。]

【抗議声明】軍事緊張を高める偵察(スパイ)衛星打ち上げに反対する

〜 宇宙の脱軍事化による戦争予防こそが必要だ 〜

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、9月11日午後、H2Aロケットによる「情報収集衛星」の発射を強行した。この衛星は、高性能望遠鏡とデジタルカメラで地上を撮影する光学衛星である。今回の打ち上げは2003年の光学衛星とレーダー衛星1基ずつの同時打ち上げに続き3基目となる。表向きは「安全保障・大規模災害への対応その他」に関する画像情報収集を目的とする「多目的衛星」と定義され、内閣情報調査室を統制する内閣情報官の下に設置された内閣衛星情報センターにより運用されている。来年1〜2月に予定されるレーダー衛星打ち上げにより4基体制になれば、地球上のあらゆる場所を毎日最低1回監視することが可能となるという。
 しかし、「情報収集衛星」が撮影したデータは公表されたことがなく、災害時にもアメリカの人工衛星が撮影した画像を購入していることからも、「安全保障」目的に特化して運用されていると思われる。そもそもこの衛星は、1998年の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の言う「人工衛星打ち上げ」を、日本政府が「弾道ミサイル・テポドン」の発射と判断した事件をきっかけとして、独自の情報収集力の強化を理由に導入が決定されたものだ。ミサイル防衛構想の一部を構成するものでもあり、まぎれもない軍事偵察衛星=スパイ衛星である。
 そうした衛星の保有は、情報がアメリカなどと共有される点だけ見ても、憲法が禁じる集団的自衛権の行使に踏み込むものだ。また、宇宙の軍事利用を禁じた「宇宙の平和利用」国会決議(1969年)にも明らかに抵触する。
 その上、その有効性自体も極めて疑わしい。アメリカは15基以上の偵察衛星、5基の早期警戒衛星を保有していると言われるが、7月5日に北朝鮮が発射したいわゆる「テポドン2号」が発射直後に墜落していたことを日米両政府が分析できたのは、7月30日になってのことであった。
 にも関わらず独自の判断能力を持とうとするなら、アメリカを上回る軍事衛星を保有しなければならない。偵察衛星でさえ二組四基で地上システムも含め約2500億円が投じられている。打ち上げだけで約96億円もかかる。早期警戒衛星は1基3000億円(米国)とさらに巨額である。衛星搭載ロケットの打ち上げ失敗も度々生じており、2003年11月の2基打ち上げの失敗では、衛星費用620億円が一瞬にして消えた。今回の打ち上げはその失敗のやり直しだ。しかも衛星の寿命は5年程度だと言われる。2009年度には光学衛星3号、2011年度にはレーダー衛星3号と光学衛星4号の打ち上げが予定されているが、一体いつまで巨額の軍事衛星打ち上げを続けるのか。
 しかも、この衛星の開発・打ち上げ・運用関連予算は、内閣官房、文部科学省、経済産業省、総務省などから執行されており、軍事予算を他部門から捻出することで実質的に増大させるという点でも問題である。2005年3月には、偵察衛星調達をめぐって国と受注メーカーの間に「天下り法人」(独立行政法人・公益法人)が介在し中間利益を得るという利権構造が明るみになった。内閣官房と文部科学省、経済産業省、総務省から委託を受けたJAXAなど4法人が、三菱電機に業務を再発注して総額50億円もの利益を得ていた。衛星開発・打ち上げ・運用は、軍需産業や天下り法人にとって格好の利権の巣となっていたのだ。
 また、次期首相最有力と言われる安倍晋三官房長官は、7月5日の北朝鮮によるミサイル発射実験を受けて、敵地攻撃能力の保有を検討すべきだと発言した。これに対し、韓国などから先制攻撃論だとの反発が高まった。偵察衛星の増強は、「敵地攻撃」のための情報収集につながるものであり、先制攻撃態勢を目指す動きと受け取られ得るものだ。東アジア地域の緊張を一層激化させ、ミサイル軍拡競争を促進するものと言わざるを得ない。
 その上、安倍長官は、日本版国家安全保障会議や日本版CIA構想をも打ち出している。これは、アメリカの予防先制攻撃戦略に基づく「対テロ戦争」を担うために、情報戦能力の向上を目指すものだ。内閣衛星情報センターなど偵察衛星の運用態勢の強化は、その一端と言えよう。こうした情報戦能力の向上は、「緊急事態」を理由に執行権に権力を集中させるという、現行憲法が否定してきた国家緊急権体制の構築につながるものであり、日本国憲法体制の根幹を揺るがすものだ。日本に在住する者に対する日常的な監視体制も強化されるだろう。
 さらに、自民党宇宙開発特別委員会(小委員長/河村建夫・元文科相)は、偵察衛星の解像度の向上(現行では民間水準並みの1メートル)や将来の防衛庁(防衛省?!)所管の早期警戒衛星の導入などを見据えて、宇宙の平和利用決議を実質的に葬り去る「宇宙基本法」(仮)案を早ければ秋の臨時国会にも提出しようとしている。
 このように偵察衛星の増強は、軍需産業利権を増大させ、先制攻撃態勢づくりを促し、宇宙における日米軍事協力を強化し、軍拡競争の激化をもたらし、民衆の安全と自由と権利を脅かす。
 私たちは、衛星発射に強く抗議し、偵察衛星開発自体の中止を求める。必要なのは宇宙の脱軍事化による戦争予防だ。そのために日本政府は、あらゆる兵器の宇宙配備を禁止する新宇宙条約制定のイニシアチブをとれ。

2006年9月12日   核とミサイル防衛にNO!キャンペーン2006

[連絡先]
(TEL・FAX)03-5711-6478  (E-mail)kojis@agate.plala.or.jp
 http://www.geocities.jp/nomd_campaign/

【抗議・要請先】
※偵察衛星発射の強行や「宇宙基本法」案に対する抗議・反対の意志表示をお願いします。

◇ 宇宙航空研究開発機構(JAXA)[理事長:立川敬二]広報部
 〒100-8260 東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビルディング2F
(TEL)03-6266-6400  (FAX)03-6266-6910
(E-mail)proffice@jaxa.jp

◇ 三菱電機
 (FAX)03-3218-2321
 (E-mail)adv.webmaster@rf.MitsubishiElectric.co.jp

※偵察衛星利権を独占している三菱電機は、ミサイル防衛用最新レーダーであるFPS−XXレーダー(通称:ガメラレーダー)の主契約企業でもあります。

◇ 河村建夫(かわむらたけお/衆院・自民)
 (TEL)03-3508-7009  (FAX)03-3502-5085

◇ 河井克行(かわいかつゆき/衆院・自民:宇宙開発特別委副委員長)
 (TEL)03-3508-7518  (FAX)03-3508-3948


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