【抗議声明】

イージス艦なんていらない! 「あたご」を廃艦にせよ!
〜イージス艦あたごの漁船衝突事件と
防衛省の情報隠しに抗議する 〜















 2月19日午前4時、海上自衛隊イージス艦「あたご」が、ハワイ沖で対空ミサイルSM2の発射試験を行った帰途、マグロはえ縄漁船「清徳丸」に衝突し、吉清治夫さんと息子の哲大さんが今なお行方不明になっている。
 清徳丸の僚船の証言や海上保安庁の調べによれば、あたごが回避義務を怠ったことは明らかである。しかし、この間の海上自衛隊および防衛省の対応はあまりにひどい。事故当初から状況説明を二転三転させたばかりか、石破防衛大臣は記者会見よりも自民党への説明を優先させ、自衛隊幹部は被害者親族に取材拒否を要求した。また、「捜査協力」をタテに客観的・基本的な事実の公表さえ拒み、あいまいな説明に終始している。そもそも、なぜ艦長(舩渡健1等海佐)が真っ先に被害者家族に謝罪し、会見に応じないのか。そして、漁船発見時刻に関して、石破大臣による情報操作とも言うべき公表の遅れも発覚した。そこにあるのは「自己防衛」隊と化した姿だ。

 守屋前防衛次官による軍産疑獄や、インド洋での海自艦船による給油偽装など、自衛隊・防衛省の情報隠しと責任逃れが問題になったばかりなのに、何ら反省が見られない。20年前の88年、30人もの命を奪った潜水艦「なだしお」による衝突事件の際の、航舶日誌改ざんに見られた隠ぺい体質は未だ変わらないと言わざるを得ない。防衛省・自衛隊は、二人の捜索に全力を挙げるとともに、全ての情報を開示し、責任を明確にし、責任者を処分し、被害者に対して真摯な謝罪と補償をすべきである。

 それと共に私たちは「そもそも日本にイージス艦は必要なのか」との根本的な問いを立てざるを得ない。排水量7750トンで国内最大の「護衛艦」であるあたごは、三菱重工長崎造船所で約1400億円もの巨費をかけて建造された。05年に進水、07年3月に就役し、「こんごう」型護衛艦4隻に次ぐ5隻目のイージス艦となった。最新イージスシステムを装備し、こんごう型以上の高度な防空戦闘能力を有するミサイル防衛(MD)対応艦だ。
 あたごは、現行のSM3ミサイル配備計画には組み込まれておらず、約31億円を費やしたハワイ沖での発射試験で使用したのもSM2だった。その理由は、日米で共同開発中の次世代型SM3の対応艦として温存されているからだ。01年度の「中期防衛力整備計画」で取得が示され、02、03年度で費用計上されたあたご型護衛艦の一番艦であるあたごは、単なる5隻目のイージス艦ではなく、MDの柱の一つである次世代SM3配備を前提とした海自護衛艦隊の再編の要に位置するものといえよう。

 そもそもMDは「スパイラル(らせん状)開発」の名で未完成兵器を配備し、更新し続ける「利権まみれの偽装兵器」に他ならない。07年12月、こんごうが「成功」させたとされるSM3による迎撃実験も、1発20億円、総経費60億円もの巨費をかけて、発射施設や飛翔コースが分かっている模擬弾に命中させたに過ぎない。2015年の配備が予定される新SM3の日本負担の共同開発費は、2014年までの9年間で10億〜12億ドルに及ぶという。また、新SM3は射程が伸びるため、ハワイやグアムを含む米国土に向かう弾道ミサイルの迎撃が想定されており、憲法が禁じる集団的自衛権の行使に踏み込むことが前提となっている。さらに日米の軍需産業は、共同生産した新SM3の輸出をにらみ、武器輸出禁止三原則の更なる破壊に向けた圧力を強めている。加えて、日米軍事再編の進行の中で、あたごは米海軍との共同軍事作戦にのめり込む恐れが高い。その先にあるのは他国民の殺傷である。私たちが未来を透視し、今ここで止めなければ、あたごは憲法9条をも「轟沈」するだろう。

 莫大な税金を浪費して、先制攻撃を促進し、憲法や産業のあり方にも変更を迫る次世代型SM3。それを搭載するあたご型護衛艦隊。それらが、民衆の生活を脅かすものであることを、今回の「衝突」は予兆している。
 防衛省・自衛隊は、今回の衝突事件を真摯に反省し、次世代型SM3の共同開発やその配備を前提とした護衛艦配備計画そのものを取り止めるべきである。軍産疑獄の帳本人である守屋前次官が主導したMD推進政策そのものも見直すべきである。さらに見逃せないのは、今回の事故を口実とした、背広・制服組の一体化を柱とする防衛省再編の企てである。3月にも設置される「法制検討チーム」(仮)は、海外派兵恒久法やサミット警備を口実とした「対テロ」軍事化をも協議するという。「盗人猛々しい」とはこの事である。「自動操舵」状態で軍備強化へと突き進む福田政権に対して、私たち自身が手動で強く、脱軍事化へと舵を切らなければならない。

私たちは福田政権および防衛省・自衛隊に対して、改めて以下を要求する。
  1. 重大事故と情報隠しの責任を取り、石破防衛大臣は辞任せよ。
    防衛省・自衛隊は全ての情報を開示せよ。


  2. イージス艦やMDは日本に必要なく税金の無駄。
    MDから撤退し、違憲艦となる「あたご」をまず廃艦にせよ。


  3. 「機能する」=戦争できる自衛隊を目指す防衛省再編を中止せよ。
    防衛省・自衛隊は解体に向けて縮小を。


  4. 2008年2月26日  核とミサイル防衛にNO!キャンペーン
                    [連絡先](TEL・FAX)03-5711-6478
                     (E-mail)kojis@agate.plala.or.jp
                      http://www.geocities.jp/nomd_campaign/


    2008年3月4日(火)更新